「赤毛のアン」の舞台はカナダですが、登場人物はみんなイギリス人です。子どもの頃は気になりませんでしたが、よく考えると変な話ですね。
当時のカナダは、イギリスとフランスが植民地にするために奪い合いを続けていました。アンが生きたのは、カナダがイギリス領地だった時代です。
ラッキーでした。もしフランス領地の時に生まれていたら、アンはもっと理不尽な生い立ちだったかもしれません。
今回は時代背景も少し考えながら、「赤毛のアン」に登場した人々をまとめていきたいと思います。
目次
アン・シャーリー
アンは孤児院出身のちょっと変わった女の子です。
手違いでマシューとマリラの元へやってきたのですが、結局気に入られて養子になります。
アンは恵まれない身の上を、豊かな想像力で切り抜けてきました。ただの湖を「きらめきの湖」と名付けて慈しみ、庭の木にも恭しく挨拶します。ガラスに映る自分の姿だって、アンの手にかかれば友達です。初めは変わり者だと敬遠していた村の人々も、彼女のそういうところに魅了されていきます。
すっかり人気者になったアンは、失敗を繰り返しながら学び、立派な女性へと成長していきました。
アンは新しい時代の女性
アンは当時の若者が憧れた女性像なのだと思います。
アンはいつだってクラスの中心にいました。まるで男の子のように、次々とトラブルを起こしては、村の人々の話題に上ります。
学校の成績も、男性であるギルバートと並んでトップクラス。クィーン学院もトップの成績で合格し、教師になった後も学費を貯めて、大学へ進学します。
女性も男性と同等に扱われるべきだ。そういう運動が盛んに行われた時代が生み出したキャラクター。それがアンなのだと思います。
マシュー・カスバート
アンを引き取ってくれた男性です。内気すぎて結婚できず、妹のマリラに支えられながらカスバート家の畑を守ってきました。
しかし、寄る年波に勝てず、孤児院から子供を引き取って、生活を手助けしてもらおうと考えます。
マリラがアンに厳しく接する分、マシューは甘やかしました。アンがすることはなんだって褒めるし、なにか失敗した時はアンと一緒に落ち込みました。苦手な女性店員とだって、アンにプレゼントを贈るためなら話せます。溺愛ですね。
そして、それと同じくらいマリラのことも大切にしています。
マシューは畑仕事を手伝ってもらうためという名目で、養子を欲しがりました。でも、畑仕事の手伝いなら人を雇えば済む話です。
本当は子供がいないマリラのことが心配だったのではないでしょうか。マシューももう六十歳です。養子を引き取れば、自分が死んでもマリラが一人になることはありませんから。
不景気を生き抜いたマシュー
マシューはアンと出会ってから五年後に亡くなってしまいます。全財産を預けていた銀行が倒産し、ショック死してしまったのです。
十九世紀後半は、世界的に不景気でした。カナダ政府も打開策を打ったのですが、逆効果でした。結果的に銀行が次々と倒産してしまいます。マシューの銀行もこの中の一つだったのでしょう。
不景気のなか頑張ってきたのに、報われませんね。アンの成長はそんなマシューの救いになったと思います。
マリラ・カスバート
アンを養子に迎えてくれた女性です。結婚はせずに、変わり者の兄マシューを何十年も支えてきました。
マリラは、ツンデレです。怒ってばかりいるから、嫌っているのかなと思いきや、実は家族のことが大好きです。
マシューが意見すれば文句をいいながらも尊重するし、アンが誰かに悪く言われると烈火のごとく怒ります。
目が悪くなってからは、すっかり穏やかになりましたが、家族思いな所だけは変わりませんでした。
世間知らずのマリラ
私は初め、マリラは古い考えの女性なのだと思っていました。
学校へ行くアンに飾りっ気のない黒い服を繕ったり、子どもがコンサートに行くことを渋ったり、と考えがどこまでも固い。
一方で、アンが勉学に励むことには理解がありました。女性がそこまで勉強する必要はないと考える人も多い中、優秀なアンを誇り、大学に進学させようとします。
たぶん、考えが古いのではなく、真面目すぎて世間に疎いだけなのでしょう。ずっと家を守ってきたマリラですが、女性が社会に出て活躍する世界に憧れていたのかもしれません。
ダイアナ・バリー
アンの親友です。
子どもの頃って、どうしてあんなに友達を愛せるのでしょう。アンとダイアナ、どちらか一方でも欠けたら死んでしまうのではないか。そう思ってしまうほど強烈に、二人は思い合っていました。
アンと出会った瞬間から意気投合したダイアナですが、性格は正反対です。裕福な家庭で育ち、家の中で読書や刺繍をすることが大好き。可愛らしい容姿を鼻にかけない、素直で控えめな女の子です。
ダイアナは現実主義者
ダイアナは進学しませんでした。勉強はそこそこできたようですが、進学の必要はないと考えていたようです。
確かに、「赤毛のアン」を見ていると、その考えにも頷けます。家の仕事が驚くほど多いのです。電気のない時代ですから、洗濯するだけでも大仕事です。その洗濯する服だって、自分で一から作らないといけません。
加えて、子だくさんが当たり前の時代です。せっかく進学しても、家事に追われて仕事どころではない女性がほとんどだったはずです。
女性らしい趣味を持ち、それなりに勉強ができて、花嫁修業もばっちり。ダイアナは、「赤毛のアン」の時代にマッチした理想の女性像だったのだと思います。
ギルバート・ブライス
アンの同級生です。
アンの赤い髪をからかったことがきっかけで、嫌われてしまいます。冷たくあしらわれても、めげずに謝罪し続けた結果、最後には仲直りすることができました。
ギルバートは、イケメンです。その上、頭が良くて運動神経もいいので、女の子の注目の的です。本人もその人気ぶりを自覚しているため、少しうぬぼれた態度を取ることがあります。
ですが、根は優しい子です。冷たい態度を取るアンにすら、困っていれば迷わず手を差し伸べています。
満足に学校に通えないギルバート
ギルバートは父親が病気のため、四年間も学校に通えませんでしたが、これは決して珍しいことではないようです。現代人とは、学校に対する考え方が大きく違うようですね。
確かに、村のほとんどの人は農業を営んでいます。頭がいいに越したことはないですが、それほど熱心に勉強する必要はなかったのかもしれませんね。
しかし、ギルバートは猛勉強し、アンと同列一位でクィーン学院に合格します。そのまま大学へ進学もするのかと思いきや、ここでも家庭の事情で進学を断念。それでもギルバートは諦めません。教師として働いて学費を貯め、大学へ行くつもりだとアンに語っています。しかも、本当に進学して医者になるんですよね。
気取っているようで、実はハングリー精神旺盛な少年です。