バルサは30歳にして、ファンタジーの主役をはっています。ヒロインというよりは、ヒーローですね。プロフェッショナルな仕事ぶりは、見ているだけでワクワクします。
「精霊の守り人」は、姐さんかっこいい、とひたすら目を輝かせて楽しめる作品です。が、原作の続編を読み進めていくと、憧れ以外に暗い気持ちも抱くことになります。
用心棒は若いうちしかできません。その上、明日命を落とすかもしれない日々の連続です。こんな人生でいいのだろうか。もう少し幸せになれる生き方を捜して欲しい。自然と、そう願うようになります。
というわけで、今回はバルサがどんな人物だったか、そして「精霊の守り人」後にどうなったのか、まとめてみました。
バルサってどういう人?
人種:カンバル人
性別:女性
年齢:30歳
職業:用心棒
バルサは、腕利きの女用心棒です。
とにかく強い。腕っぷしだけではありません。多くの修羅場をくぐり、そこから得た経験が、彼女を一流の用心棒にしてくれました。
例えば、皇太子チャグムの母親から、こんな依頼を受けました。
「息子を宮から逃がしてほしい。このままでは、父親である帝に暗殺されてしまうから」
突然のことなので、バルサはなんの準備もしていません。依頼主もノープランです。
どうしたらいいと思いますか? 私なら、すぐに皇子の手を取って逃げます。一分一秒でも早く、その場を立ち去りたいからです。
しかし、バルサはここで一工夫します。なんと、皇子の布団に、火を放ったのです。
そんなことをしたら、人が駆け付けてきそうですよね。
ですが、消火活動で注意をそらせるし、王子の死体を見つけるまで、時間を稼ぐことができます。運が良ければ、死んだと思ってくれるかもしれません。
その間に、チャグムをできるだけ遠くへ逃がそう。バルサは、瞬時にそこまで計画を立てたのです。
でも、おかしいですよね。
そこまで頭が回るなら、どうしてチャグム皇子を助けたのでしょう。皇族の厄介ごとに首を突っ込むなんて、馬鹿げています。バルサなら、世間知らずのお后を騙して、一人でうまいこと逃げられたのではないでしょうか。
それに、ここまで逃げなれているというのも妙です。用心棒というのは、基本的に旅商人を盗賊から守るのが仕事です。いかにベテランといっても、皇族の厄介ごとに巻き込まれて、どうすればいいか即決できるものなのでしょうか。
これらを説明するには、まず、バルサの過去を話す必要があります。
バルサの過去
バルサは6歳のときに、故郷カンバル王国から逃げ出しました。
バルサの父親は、王室付きの医者でした。が、王の弟から暗殺を命じられ、王が飲む薬に毒を盛ります。父親は、この暗殺を引き受けても断っても、家族ともども殺されることが分っていました。
自分が殺されるのは仕方ない。ですが、娘は別です。助けたい一心で、友人のジグロに頭を下げます。ジグロは最強の槍使いでした。彼なら、王の手からバルサを守り切ることができるかもしれません。
バルサはジグロに連れられて、国を出ました。追手はどこまでも追いかけてきます。バルサとジグロは用心棒稼業をしながら、追手から逃げる日々を続けます。バルサの追っ手を撒く技術は、このときに身に付いたものです。
バルサは理不尽な身の上を呪うと同時に、ジグロに申し訳ないと思い続けてきました。ジグロは自分さえ助けなければ、今も国でいい生活が送れていたはずです。追手である元同僚を殺すこともなかったでしょう。
バルサが困っている人を助けるのは、ジグロに対する恩返しみたいなもののようです。苦しかった子ども時代を思い出し、つい助けてしまうというのもあると思います。
バルサが強い理由
バルサの強さは尋常ではありません。新ヨゴ皇国で最強の戦士4人と同時に戦いながら、チャグムを守り切りました。しかも、一人も殺さずにです。
バルサの戦闘技術は、恩人ジグロから教わったものです。
ジグロは、故郷カンバル王国で天才と謡われる槍使いでした。優秀な兄を押しのけて、最年少で王直属の槍使いになったほどです。バルサの父親が、娘を託したいと思った気持ちがよく分かりますね。
バルサは追手から逃げる道中、ジグロに戦い方を教えてくれるよう頼みました。守られるばかりなのが嫌になったのでしょう。
しかし、ジグロは断ります。女性は戦闘に向いていないと言っていましたが、これは建前ですね。バルサに血なまぐさい道を歩んでほしくなかったのです。
ですが、バルサに槍使いとしての才能があるのは明らかでした。なにせ、バルサはジグロの動きを見ただけで、それをそっくり真似ることができたのです。
それに、ジグロだっていつまでもバルサを守れるわけではありません。いつかは、バルサが独り立ちしなければならない日が来ます。
わけありの少女が一人で生きていくには、強くなるしかない。ジグロはそうやって自分を納得させて、バルサに戦い方を教えました。
いつまで、この生活を続けていくのか
用心棒は、いつまでもできる仕事ではありません。バルサなら、おばあちゃんになっても短槍を振り回していそうですが、第一線で活躍するのは無理ですよね。
それに、お人好しには危険すぎる仕事です。原作でも、いったい何度死にかけたことか。人助けもいいのですが、もう少し穏やかな生き方を見つけてほしいものです。
幼馴染のタンダがプロポーズをしてくれているので、私としては一刻も早く、それを受けてほしいのですが、バルサは即答しません。
どうやら、背負った過去が重すぎて、幸せになろうなんて思えないようです。アニメでは、タンダのプロポーズは宙ぶらりんのまま終わってしまいました。
原作の続編では、最終的にタンダと結ばれます。ただし、そこに行きつくまでに7年かかりました。
呆れないでくださいね。重い過去と向き合うために故郷に戻ったり、道中で人助けをしたりしている間に7年も経ってしまったのです。
お人好しな性格は治っていませんが、タンダと一緒になってからは穏やかな日々を送れているようです。帰れる家ができて、本当によかった。きっと、ジグロも喜んでくれていると思います。